突然ですが、あなたは何のために仕事をしていますか?
- お金のため?
- 生活のため?
- 義務だから?
確かに生きるためにはお金が必要です。
「社会の問題を解決して人に尽くすために働いている」こんな考えを聞くと、綺麗事に感じるかもしれません。
パーパス・ブランディングとは、まさにこの一見綺麗事とも言える考え方です。どうです?受け入れられます?
パーパス・ブランディングとは?
パーパス・ブランディング(英:Purpose Branding)とは、社会問題への取り組みを人々に認識してもらい、共感を得ることでブランド価値を高めること。
以下のようなことを考え、ビジネスをする過程で、従業員・顧客・社会を幸せにするものです。売り手よし買い手よし社会よしの三方よしと近い考え方ですね。
- 自社のビジネスは社会のどんな問題を解決しているのか?
- 社会問題とビジネスの目標は一致しているか?
- パーパスに対して社員の腹落ち感はあるか?
確かに筆者お金のために仕事をすることもあるのですが、どうでもいい単純作業をやらされている時などは、「こんなことして何の意味があるんだろう」「この仕事は誰の役に立っているんだろう?」と思います。
お金のためだけに働くだけじゃなくて、自分にしかできない仕事で誰かに喜ばれたいと思うのが人情ではないでしょうか。
パーパス・ブランディングが本当に実現できるとしたら…
- 従業員のコミットメントが高まる
- お客さんに喜ばれる
- 従業員・消費者の共感を得て長い間愛される
と、いうようにいい感じの世の中になりそうですよね。
フィクションでしょうか?
ファンタジーでしょうか?
いいえ現実です。
パーパス・ブランディングのようなことをしていた経営者をご紹介させてください。
「この世から貧困をなくしたい」松下幸之助に学ぶ存在意義の重要性
水道哲学とは、松下幸之助の経営哲学です。水道の水のように低価格で良質なものを大量供給し、物価を廉価たらしめ容易に消費者の手に行き渡るようにする、という哲学です。
産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには、物資の生産に次ぐ生産をもって富を増大させなければならない。
水道の水は加工され価あるものであるが、通行人がこれを飲んでもとがめられない。それは量が多く、価格があまりにも安いからである。
産業人の使命も、水道の水のごとく物資を豊富にかつ廉価に生産提供することである。
それによってこの世から貧乏を克服し、人々に幸福をもたらし、楽土を建設することができる。
わが社の真の使命もまたそこにある
引用元:Panasonic
貧しい少年時代を過ごした松下さんだからこそ、凄みがあります。
この使命が明示されたのは、1932年5月のこと。当時の社会情勢を見てみると…
- 1923年:関東大震災
- 1927年:昭和恐慌
- 1929年:世界恐慌
そ、壮絶過ぎる。
都市では会社が倒産し、街は失業者で溢れ、農村では娘を身売りする家や欠食児童があとを経ちませんでした。
こんな時代に「この世から貧困をなくす」と本気で言っている人がいたら、そりゃついていきたくなりますよね。
しかも口だけじゃなくて本当に達成しているところがすごい…
この理念は経営戦略にも反映されており、当時の松下電器は他社の新製品を真似することで研究開発費を削減し、なおかつ、全国隅々にある販売網を生かして、大量生産・大量販売によるスケールメリットを享受していました。
原価を下げることで、高品質の商品を低価格で家庭に届けることを可能にしていました。そりゃ商品買いたくなりますよね。
※厳密にはパーパスブランディングをしていたわけではありませんが、社会問題の解決とブランド強化を同時に達成しているいい例なので今回ご紹介しました。
パーパス・ブランディングを仕事に生かすためのポイント
松下幸之助のような神がかった理念は持てなくても、自分の仕事が誰かの役にたっている感覚は誰でも持ちたいですよね。
パーパス・ブランディングを活用するには、以下の自問を繰り返しましょう。
- この仕事は誰のどんな問題を解決できるのか?
- 消費者に自社の取り組みは伝わっているか?共感されているか?
- 本当に解決したいのか?
共感を生むためには、社会の問題と自社が提供するソリューションが一致していなければなりません。また、経営者や従業員にとっては3の「本当に解決したいのか?」という点が重要ですよね。パーパスに共感できなければ、本気で粘ろうとは思わないはず。誰かの夢ではなく自分の夢を追っているかが重要。
まとめ
道徳を忘れた経済は、罪悪である。
経済を忘れた道徳は、寝言である。
二宮尊徳
筆者は基本的にパーパス・ブランディングに対して斜に構えて見ているところがありました。忙しくしていると、自分の作業が誰かの役にたっていることなんて考えもしませんよね。
しかし、お金のため、生活のためだけに働くというのでは、どうも虚しい。自分にしかできないことは何なのか、人々に共感される余地はあるのか、常に問い続けていきたいところです。
【今回ご紹介した本】
Purpose Brandingには、社会貢献とブランディングの両立に成功している企業へのインタビューが複数載っています。
Purpose Brandingに成功している企業が何を考えているのか、どのような取り組みをしているのか、という点がわかります。How To本というより読み解く系の本なので、正直万人にはおすすめできません。
ブランディングについて知りたい方には参考になる内容です。