最初のひらめきが良くなければ、いくら努力してもダメだ。
ただ努力だけという人は、エネルギーを無駄にしているにすぎない。
トーマス・エジソン
問題発見力(課題発見力)とは、理想と現実を把握し、足りないもの(ギャップ)を埋めるために必要なアプローチ方法を選定するスキルのことです。
問題発見力と問題解決力の違いは…
- 問題発見力:解く価値がある問題とそうでない問題を見極める能力
- 問題解決力:問題への最適解を見出す能力
時間やお金が限られている以上、無駄だとわかりきっている努力はさけたいところです。問題発見能力を身につけられると、無駄な労力使わずに最大の成果を得られるようになります。
この記事では、問題発見力について以下目次の内容をご説明します。
問題発見力を鍛える3つのメリット
重要なことは、正しい答えを見つけることではない。
正しい問いを探すことである。
間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない。
P.F.ドラッカー
- 自分にとって本当に大切なものを選択できるようになる
- より少ない労力でより多くの成果を得られる
- 気合と根性に逃げないでよくなる
自分にとって本当に大切なものを選択できるようになる
問題発見力を身につけると、自分に重要なものをそうでないものを見極められるようになります。
「無駄な仕事なんてない」
「就職したら3年は働くべき」など
日本社会では愚直な努力や無節操な継続が無条件に礼賛されることがあります。
確かに粘り強さが必要なシチュエーションもあるでしょう。
しかし、残念ながらこの世にはやる必要のないタスクもあります。100歩譲って無駄な仕事がなかったとしても、優先順位はあるはずです。
ヘルパーとして多くの患者の最後を看取ってきたブロニー・ウェアの著書『死ぬ瞬間の5つの後悔』には、介護の患者が最後に言い残した後悔のうち特に多かったものが5つ書かれています。
そのうちの2つが…
- 「自分に正直な人生を生きればよかった」
- 「働き過ぎなければよかった」
心を亡くすと書いて忙しいと読みますが、忙しく毎日を過ごしていると、自分の将来について考える時間を確保することもできません。
最初は頑張っているだけで良くても、そのうち「自分がやりたかったのはこんなことだっけ」と悩むことになるかもしれません。
がむしゃらに努力することも大事ですが、目的を忘れれば道に迷ってしまいます。
より少ない労力でより多くの成果を得られる
行動することももちろん大事なのですが、何も考えずがむしゃらに行動するだけでは、自分にとって本当に欲しいものを手に入れるのは困難です。
問題発見能力がないと…
「毎月残業をしても仕事が終わらない(収入が増えない)」
「長時間勉強しているのになかなか成績が伸びない」
「面接を何社も受けているのに内定が出ない(出てもすぐに転職する)」
最大限の成果を上げようと思った時、想定されるアプローチ方法には次の2つがあり得ます。
- 重要性が高い1割の仕事に9割のリソースを割く
- 何でもかんでも頑張る
前者のアプローチを取るために身につけたいスキルの1つが問題発見力です。
問題発見力がないと… | 問題発見力があると… | |
思考 | 全部重要
何でもかんでもやらなきゃ 頼まれたことは全てやらなきゃ |
重要なものは少ない
何をやめるか? 何を断るか? |
行動 | やることを無駄に増やす
目についたものから片っ端にやる 気合と根性で残業にすべてをかける |
どうでもいいことを計画的に減らす
最重要な問題はなにか仮説を立てる 問題解決に関与しないタスクは捨てる |
結果 | 結果が出ない
すべてが中途半端 疲れは残ったが何も手にしていない |
結果が出る
バリューのある仕事ができる 時間や労力を浪費せずに結果を出せる |
「全て最優先」というのは何も優先していないのと限りなく等しい
気合と根性に逃げないでよくなる
何も考えずに努力すると、頑張っている気がしますし、評価されることもあります。ただ、努力するのはあくまで手段であって目的ではありません。がむしゃらな努力が報われためには、少なくとも次の2点を満たしている必要があります。
【がむしゃらな努力が報われる前提条件】
- 目的が明確である
- 目的を実現するための最適解を選べている
上記を満たさずに努力をしてしまうと、結果が出るかどうかは完全に運頼りにならざるを得ません。
問題発見ができれば、運をはじめとした不確定要素を最小限に抑えられます。
問題発見ができない原因
問題発見ができない原因を整理すると、以下の4パターンに分類できます。
- 理想の状態を適切に描けていない
- 現状を適切に把握できていない
- ギャップを構造化できていない
- 解に優先順位をつけられていない
上記のうち、あいまいな点を明確化することによって、質のいい問題発見、ひいては問題解決に繋がります。
理想の状態を適切に描けていない
どこに行こうとしているかがわかっていなければ、どの道を通ってもどこにも行けない
ヘンリー・キッシンジャー
ゴールを決定しないことには、どこにも向かいようがありません。
例えば家族旅行をするとしましょう。旅行をする際は、「ハワイでバカンスを楽しみたい」「パリに行って凱旋門を見たい」というように、旅の目的地ややりたいことを決めるかと思います。
目的地が決まった後に、「どの飛行機を使うのか」「お金はいつから月いくらためるのか」「どのホテルにとまるのか」といった手段を検討するかと思います。
問題を解決する際も、このように理想や目的、ゴールを設定しなければいけません。とりあえず電車に乗ってみる旅も楽しそうではありますが、家族連れだとそうもいきません。
理想を描けない状態は、以下の2つに整理できます。
- 理想の状態が明確でない
- 理想の状態が不適切である
理想の状態が明確でない
そもそもどうなりたいのか、何をしたいのかがわからないケースです。
例えば…
個人のケース | 企業のケース |
・将来何になりたいのかわからない
・転職をしたいがやりたい仕事がない |
・事業が停滞しており身を削るようなリストラをしているが、成長の目処がたっていない
・業界自体が縮小しており、ビジョンがないまま細々と延命をしている |
理想の状態が不適切である
理想は描けてはいるものの、適切な理想ではないケースです。
例えば…
個人のケース | 企業のケース |
1. 大企業に入社して終身雇用されたい
2. プログラミングもデザインも英語も会計も何でもかんでもできるようになりたい |
3. 世界一早い馬車を作りたい
4. (コストを削減できる仕組みがないのに)競合を真似して価格競争をしてしまう |
1と3 理想が時代と適合していないケース
2 何かを決めているようでいて何も決めていないケース
4 別の戦略を考えた方がいいケース
上記のように、理想はあるもののなんらかの要因で実現が困難・または実現する価値がない場合は、理想を再定義した方がいいかもしれません。
最も、上記の例はかなり極端に書いています。現実の理想は実現可能か一見して判断がつきにくいことがあります。この場合はその道の専門家や経験者など、客観的な第三者に意見を求めることで、理想に無理がないか判断するといいかもしれません。
現状を適切に把握できていない
理想を明確にするとともに、現状を正確に理解する必要があります。
極端な話、40歳未経験からプロ野球選手を目指すのはほとんど不可能に近いでしょう。
理想と現実のギャップを把握する前段階として、自分が持っているもの、そうでないものを把握する必要があります。
現状を把握できない原因は大きく分けて次の2つです。
- 現状を分析しようと思っていない
- 現状を分析するスキルがない
現状を分析しようと思っていない
自分や自社のことを客観的に見るのは難しいものです。
自分を客観的に見られていると思う場合や、そもそも客観視しようと思わない場合もあるかもしれません。
現状を分析しようと思わない原因は無数にあります。
一例を挙げると…
- 過度な自信により現状を見る目が曇っている(自己奉仕バイアス)
- 現状と向きあうことから逃げてしまう(回避性が高い)
- 現状を理解できていると思い込んでいる(確証バイアス等)
現状を把握することは時に痛みを伴いますが、本来の自分の姿を把握した方が最終的に合理的な打ち手を選択肢できます。
例えば、完全未経験の状態からデータサイエンティストに転職したいとしましょう。
データサイエンティストになるためは勉強が必要です。
学習法の選択肢は例えば
- 背伸びをする:オライリーのディープラーニングのテキストを買う
- 身の丈にあった学習をする:かんたんな統計の本を読み、統計に必要な知識(確率、線形代数、微分など)を必要に応じて学習する
データサイエンスの学習では、中学・高校の数学の一部を理解していないと、基本的な統計すら理解するのは困難です。
結局現状の自分を把握しなければ、問題解決の過程で無理が出るか、問題解決を後回しにしてしまうこともあり得ます。
現状を分析するスキルがない
現状を把握する気持ちはあるものの、分析方法がわからないケースです。
具体的な分析対象によって適切な分析方法はことなるのでやや抽象的な説明になってしまいますが、オーソドックスな流れとしては次の通りです。
- 分析したい対象を明確にする
- 合理的な分析方法を調べて実践する
- 分析方法が間違っていないか他人に確認する
ここではひとまず、以下2点を明確にしておきたいところです。
「現状のうち何を把握したいのか?」
「どんな分析方法がありえるのか」
ギャップを構造化できていない
理想と現状が明確になったら、次は両者のギャップの構造を把握します。これはロジックツリーに落とし込むことで比較的簡単に可視化できます。
例えば運営しているサイトの営業利益を月10万円から月100万円にしたいとします。このような場合、ざっくりですが以下のようなロジックツリーを作成します。
※実際はもっと細かくやった方がいいです。
サイト利益最大化、以下の階層がそれぞれ問題に対する解になっています。
ギャップを構造化できたら、次は各項目に実際の数字を入れていき、利益率へのインパクトが高い解を特定します。
解に優先順位をつけられていない
利益率を上げる方法はいくらでもあります。よくないのは、目についた問題や慣れている解決方法にしがみつくことです。
例えば、リストラを繰り返せば人件費は下がるので短期的には利益率が高くなりますが、根本的な解決にはなりません。
あくまで現状を数字で把握して、インパクトの大きい解を検討するべきです。
仮にサイトへのアクセスが月に100件しかないのであれば、購買率を上げるよりもアクセスを増やす動きをした方がいいことになります。
アクセスを増やすとしたら、リスティング広告を運用するのか、SEOで地道に稼ぐのか、ソーシャルで拡散を図るのか、といった選択肢があり得ます。お金をかけられる場合は広告を出稿すればいいですし、そうでなければSEOやソーシャルを頑張ることになります。
問題発見の方法
首から下で稼げるのは1日数ドルだが、首から上を働かせれば無限の富を生み出せる。
トーマス・エジソン
それでは、いよいよ問題発見の方法を見ていきましょう。
以下、4点をお伝えします。
- 理想を明確にする方法
- 現状を把握する方法
- ギャップを構造化する方法
- 解に優先順位をつける方法
1点だけ注意点があるのですが、一発でイケてる問題発見をするのが難しいこともあります。未知の問題や慣れていない問題にチャレンジしようと思えば思うほどそうなります。
なので、完璧主義にならないで、とりあえず問いを立てる気軽さが大事です。その分野に詳しい人のフィードバックを得てPDCAを回しながら課題の設定を洗練させていければ理想的ですね。
理想を明確にする方法
「理想の状態がイメージできない」という方は以下の流れで思考を進めてみてください。
- 問題発見の4Pを使う
- 理想を言語化してみる
- ブレインストーミングする
問題発見の4Pを使う
「理想の状態を描きたいけれど、どういう方法(手順)でやればいいかわからない」ということがあります。この場合は本を読む・詳しい人に聞く・フレームワークを使うなどのアプローチ方法が考えられます。
ここでは、問題発見のフレームワークである『問題発見の4P』をご紹介します。
問題発見の4Pは、以下4つの軸から問題を的確に把握するためのフレームワークです。
Purpose:目的軸 | Position:立場軸 |
|
|
Perspective:空間軸 | Period:時間軸 |
|
Purpose:目的軸
個人であれ法人であれ、何かしらの行動を起こす背景には目的があります。
「あたりまえじゃないか」と思うかもしれないのですが、目の前のことに集中しているうちに、いつのまにか「自分は何でこんなに頑張っているんだろう」と思ったことがある人もいるかもしれません。
例えばプログラミングの勉強を頑張っている人がいたとしましょう。サイトや書籍で学習をすると少しずつ知識はついてきますが、お金を稼げるようになるにはハードルがあるものです。
プログラミングを勉強するというのは、目的ではなく手段です。何を目的にするかによって、別の手段が選べるかもしれません。
例えば、目的が『ホームページを作って広告収入を得ること』だったとします。この場合は一旦学習をやめて、ワードプレスのようなノーコード・ローコーコードのものをつかってサイトを作り、すぐにコンテンツを追加した方が早いです。
目的が『エンジニアになること』だったとします。この場合はバイトでもなんでもいいので面接を受けてみて、実務経験を積む方が早いかもしれません。このアクションをやってみて無理であれば、就職の面倒をみてくれるスクールに通う選択肢や、知人のツテで就職する選択肢、社内転職を図る選択肢などが出てきます。
Position:立場軸
立場軸とは、『この問題は誰にとっての問題なのか』を考えることです。
例えば世界の株価が下がったとしましょう。このニュースで悲しむのは、下がった株を持っていた人です。一方、空売りをしていた人や、これから株を買いたい人にとっては嬉しいニュースになります。
ビジネスの場でも、問題の主体となる対象には相当なバリエーションがあります。
例えば…
- 株主にとっての問題
- 社長にとっての問題
- 上司にとっての問題
- 自分にとっての問題
- 同僚にとっての問題
- 取引先にとっての問題
- 顧客にとっての問題
問題の主体が変われば最適解も自ずと変化してきます。
Perspective:空間軸
空間軸とは、問題を俯瞰して対局的に物事を見る軸のことです。
Perspectiveを変えて成功した事例として、ファイザー社のバイアグラがあります。バイアグラは元々心臓治療の薬として開発されました。
しかし臨床試験の過程で心臓の治療をするメカニズムが男性の勃起不全の治療にも効果があることがわかり、対象となる疾病を心臓病から泌尿器へと切り替えました。
このように、当初想定していた視点とは別の視点で対象を眺めることで、これまで想定していなかった解を検討する余地が生まれてきます。
Period:時間軸
時間軸は、問題をどの時点・どの期間で設定するのかという軸です。
時間軸がズレると、問題の設定がおかしなことになります。
例えば理想の状態がセミリタイアすることだったとしましょう。
セミリタイアまでのフローは例えば…
- 1年後:労働収入を最大化する
- 3年後:事業収入を最大化する
- 1~9年後:ハイリスクハイリターンな株に投資して5000万円用意する
- 10年後:年間4%の利子が得られる対象に投資する
- 10年後:田舎に引っ越して年間200万円以下で暮らす
1年後と10年後でやるべきことが違うのはわかりやすいかと思います。労働収入を増やすべきフェースで田舎に引っ越したり、資産が少ない段階で年間4%の利子が得られる対象に投資したりするのは、狙いがない限り最適解ではないでしょう。
理想を言語化してみる
考えるという事と書くという事は二つの事実を指してはいないのである。
言葉という技術を飛びこして何か考えるなどとは狂気の沙汰である。
小林秀雄
ある程度理想をイメージできたら、次は理想を言語化します。
言語化をしないと理想を曖昧に理解していても気づかないことがあります。複数人で理想を共有する場合はなおさらです。
言語化するコツとして、『イシューからはじめよ』より、よいイシューの3条件をご紹介します。
よいイシューの3条件
本質的な選択肢である |
問題を解決することで、今後の方向性が大きく変わる |
深い仮説がある |
常識を覆す洞察がある。新しい構造で物事を説明できる |
答えをだせる |
自分の力で結論をだせる |
ブレインストーミングする
なにも思いつかない場合は、とりあえず思いついたことを片っぱしから書き出していくといいでしょう。
ブレインストーミングをするメリットは…
- 5分程度続けていると作業興奮でやる気がでてくる
- 既出の情報から連鎖的に他の情報を思いつくことがある
- 自分に欠けている点が見えることがある
- 情報を書き出すことで短期記憶を圧迫しないので、考えている間に別のことを考えても、それまで考えていたことを忘れずに済む。結果、思考に認知的資源を集中できる
一旦アイデア出しに専念し、後で推敲や選抜をすると楽です。
現状を把握する方法
現状を把握する上で、調べるといい知識・情報には次の3つがありえます。
- 基礎知識を得る
- 定量情報を得る
- 定性情報を得る
なお、現実を客観的に把握することさえできれば、上記を全て集める必要はありません。
基礎知識を得る
仮説や対策を考えたりするために必要な情報を収集することです。
「これがわかっていなければ、〇〇について考えるのは難しい」という情報を集めていきます。
例えば筆者は当記事を書くために、後述『問題発見力を鍛えたい方におすすめの本3冊』で問題発見の基礎知識を得ました。
定量情報を得る
数値化できるデータのことです。
問題についての基礎知識を得た上で、問題について検討する上で必要なデータを活用します。
定性情報を得る
定性情報とは、データにしにくい情報のことです。データを見を見ると指標の変動や相関を見ることができますが、扱う問題の全体像を掴むには定性情報を得た方がいいケースもあります。
特に、一次情報をとるようにしましょう。一次情報とは、誰のフィルターも通っていない情報のことです。
企業の中では現実と乖離した施策が打ち出されることがありますが、これは現場で起きている情報を見ていない人が意思決定をするとよく起きます。
一次情報が得られる先は例えば…
生産ライン、商品が使われている現場、販売店、調達の現場
ギャップを構造化する方法
困難は分割せよ
ルネ・デカルト
ビジネスでも人生でも思わず目を背けてしまうような高い壁にブチ当たることがあります。
この場合、問題を一度に解決するのではなく、問題を細分化して各個撃破することで解決の糸口が見えることがあります。
豚の丸焼きを一度に全て口に入れることはできませんが、フォークとナイフを使って切り分ければ1口ずつ美味しく食べられます。困難も切り分けるべきです。
【ギャップを構造化する方法】
- 問題を分解する
- モレなくダブりなく分割する
- 分析手法を選定する
- 効果を数字で把握できるようにする
問題を分解する
では、問題を分割するにはどうするといいのでしょうか?
問題を把握する際は、問題の構造を階層化して把握すると全体像を掴みやすくなります。
ロジックツリーを使って、問題の構造を可視化しましょう。
「ロジックツリーを作るイメージがわかない」という場合は、ロジックツリーで画像検索
をすると参考になるかと思います。
モレなくダブりなく分割する
問題を分割する際にもう一つ大事なことがあります。問題をモレなくダブりなく分割することです(MECE)。
MECEができないと、機会損失や浪費に繋がります。
例えば日本酒を販売しようとしていたときに、既存の販路(例えば店舗)だけで売ろうとするとどうしても店舗の前を通る人数に売り上げが左右されます。
店舗を増やす選択肢もありますが、ここでぱっと思いついた解に飛びついては機会損失しかねません。
MECEを意識すると他にも選択肢が出てきます。例えば…
- ECサイトで販売する(オフラインかオンラインか)
- (ネットで売るなら)自分でサイトをつくるか、既存のプラットフォームを作るか
- 日本で売るか、海外で売るか
- 海外で売るなら、先進国か途上国か など
もちろんまだまだ選択肢はあると思います。また、選択肢を出してもリソース的に厳しいこともあります。この場合は、低コストで効果が高い選択肢から順に検討することになります。
MECEについてもっと知りたい方は、MECEで画像検索をしてみてください。
分析手法を選定する
企業経営のように、一定数以上のデータを利用可能であり、かつ分析の必要性が高い場合は、目的に合致した分析手法を選ぶことになります。
分析手法については無数にあるので、別の機会に解説します。
一部をご紹介すると…
分析手法 | 説明 |
トレンド分析 | 時間軸の変化によって構造変化のきっかけを掴む |
+/-差異分析 | ギャップの原因になっている要因を特定する |
付加価値分析 | 顧客の視点からコストに正当性があるか検討する |
CS/CE分析 | 顧客にとっての現在・将来の価値を高める |
集中・分散分析 | マネジメントがうまくいっているか、ズレとばらつきから把握する |
効果を数字で把握できるようにする
数字で把握できるようにしないと、問題が解決できたのかできていないのか判断がつきません。大前提として、問題を数値で把握できるようにはするべきでしょう。
数値化することで、どこに手を入れるとインパクトが大きくなりそうか仮説を立てやすくなります。
解に優先順位をつける方法
理想と現実、そしてギャップの構造が明らかになったら、最後に解に優先順位をつけていきましょう。
- 選択肢を選抜する(個人向け)
- 重み付けをする(法人向け)
- 断る力を身につける
- 定期的に振り返る
選択肢を選抜する(個人向け)
ここまでで複数の問題設定方法や解を思いついたかと思います。最後は仕上げとして、選択肢の選抜を行います。
個人の場合、「絶対やりたい」「やらない」の2択に絞ると選別をしやすくなります(「どちらかというとやりたい」「やりたい」を思い切って捨てる)。
また、舞い込んできたチャンスを選別する際は、次の表を埋めることで、複数のチャンスを相対的に比較検討しやすくなります。
チャンス | |||
最低限の基準 | |||
理想の基準 |
重み付けをする(法人向け)
限られた経営資源を有効活用するためには、資源を効率的・効果的に配分する必要があります。
重み付けとは、資源を何にどのくらい配分するか優先順位をつけることです。
重み付けをする方法には次のようなものがあります。
分析手法 | 説明 |
感度分析 | 影響因子が結果に与える振れ幅を評価して重み付けを行う |
パレート分析 | 貢献が大きい要因に対して重み付けを行う |
ABC分析 | 重点分野のなかで優先順位をつける |
ピーク分析 | 集中化するか、平準化するか判断する |
リスク・期待値分析 | 不確実性を把握した上で意思決定をする |
断る力を身につける
大切なこととそうでないことがわかったら、次は自分の時間を守るために断る技術を覚えましょう。
「断るの苦手だな」という方は、Amazonで断る技術で検索すると、役に立つ本と出会えるかもしれません。
断るコツは、相手を威圧することなく、直接的な表現で伝えることです。
完全に余談なのですが、筆者は会社員時代に断りにくいタスクを振られた時は「わかりました!ただ〇〇を週末までにやらなければいけないので、かわりにこちらをご対応いただけますか?」というように返報性を使って雑用を振り返していました。
定期的に振り返る
適切な問題発見や課題の設定を一発でやるのは難易度の高いことです。「今の課題は何か?」「目的と手段が入れ替わっていないか?」ということを定期的に振り返って軌道修正しましょう。PDCAというやつですね。
問題発見力を鍛えたい方におすすめの本3冊
当記事を作成する上で参考になった書籍3冊をご紹介します。問題発見のノウハウについてより深く勉強したい方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
- 問題発見プロフェッショナル|法人向け
- エッセンシャル思考|個人向け
- イシューからはじめよ|法人・個人向け
問題発見プロフェッショナル|法人向け
マッキンゼー出身の著者による問題発見のバイブル的な本。
ビジネスの現場で問題の分析をしようと思ったとき、どのデータを取得してどのように分析するべきなのか迷うことがあります。
問題解決系の本を読んだ時によくある問題が、次の2点かと思います。
- 書き方が難解すぎて現状の問題への応用が効かない
- 内容が噛み砕かれ過ぎていて、読みやすいもののイマイチ使いにくい
そんなときに役に立つ本が問題発見プロフェッショナルです。この本では問題発見をする具体的な方法と、分析手法が20種類近く紹介されています。マッキンゼー本は図解がわかりやすいことが多いですが、この本もその例に漏れません。
姉妹本問題解決プロフェッショナルを読めば、問題を発見した後の解決方法も網羅できます。
仕事の課題を解決したい方におすすめです。
エッセンシャル思考|個人向け
一方、法人向けの問題発見・解決方法がそのまま個人の問題解決に応用しにくいことがあります。
例えば、MECEやロジックツリーなどはまだ個人の問題解決にも使えますが、トレンド分析やコスト分析のような一定数以上のデータを使う分析などは個人の問題に応用しにくかったりします。
問題発見力を個人的な問題に応用したい場合に参考になるのがエッセンシャル思考
です。
一言で説明すると、この本には最小限の努力で最大限の結果を得るための、問題を見極める技術、選択する技術が書かれています。
自分にとって本当に大事なものがわからない、やりたいことがわからない、という方には参考になるかもしれません。
イシューからはじめよ|法人・個人向け
世に出ている書籍は学者による書籍とビジネスマンによる書籍があり、ロジックやフレームワークにより過ぎていることや、経験則により過ぎていることがすくなくありません。
本書は、マッキンゼーで勤務後、イェール大学脳神経学プログラムに入学し、Ph.Dを取得した安宅和人さんによる著書。学術もビジネスも経験しているレアなお方。学術にもビジネスにも偏り過ぎていないうえに、学術・ビジネスの双方で役に立ちそうな内容。
著者は本の中で、「ビジネスであろうとサイエンスであろうと、本当に優れた知的生産には共通の手法がある」と述べています。
本書の構成は…
- イシュードリブン-「解く」前に「見極める」
- 仮設ドリブン1-イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
- 仮設ドリブン2-ストーリーを絵コンテにする
- アウトプットドリブン-実際の分析を進める
- メッセージドリブン-「伝えるもの」をまとめる
課題の設定方法、イシューの質の高め方についてより詳しくなりたい方は読んでみるといいかもしれません。
まとめ
以上、問題発見を妨げる原因と対策についてお伝えしてきました。
問題発見の流れをおさらいすると…
- 理想の状態を定義する
- 現在の状況を把握する
- 理想と現実のギャップを構造化する
- 解に優先順位をつける
この4点が明確であり、かつ特定の問題に詳しい人の確認を得られれば、あとはPDCAをくし返して精度を上げていくだけです。
1つ注意点です。
問題発見や問題解決の本を参照する場合はフレームワークがたくさん出てきます。これらは全て把握しようと思うと挫折の原因になったり、徒労に終わったりします。
あくまで上でお伝えした4点を明確に構造化・数値化できて、次のアクションを定義できれば、必ずしもフレームワークを使う必要はないかもしれません。
「どこから手をつけるべきか判断がつかない」というような場合は、いったんロジックツリーのような汎用性の高いものから作成してみてはいかがでしょうか。少なくとも全体像を把握しやすくなるはずです。